「ええやろ!」ーー無免許のままお客様の髪にハサミを入れた朝
この家に、私の居場所はない。
そう思っていましたが、それは事実でした。
義母がKekoに朝ご飯を勧める声が聞こえましたが、もうどうでもよかった。お客さまを接客する店の空間だけが、私にとって唯一の居場所でした。
開店時間になり、お客さまの施術を始めようとしたとき、夫が私のそばに来て言いました。
「Kekoにカットさせる」
Kekoの実家は確かに美容室を経営していました。しかしKekoは美容師ではありませんでした。もちろん免許もありません。
「えええっ!」
止めました。しかし夫はこう言いました。
「毎日親の仕事する姿見てたからできるっていってはった」
そしてお客さまに向かって、脅迫気味にこう言いました。
「ええやろ!あとはオレが何とかするから」
泣き出しそうなお客さまの顔が、私に助けを求めていました。でも私には何もできませんでした。
すみません。申し訳ございません。ごめんなさい。
酒臭く、タバコを咥えたKekoが夫のハサミを握り、お客さまのスタイルすら聞かずに頭頂部でスパッと切りました。
今なら言えます。これは傷害罪です。
ひと通り切った後、夫はズタズタになった髪を笑いながら修正し始めました。
「流石は門前の小僧習わぬ経を読むやなぁ、hahaha」
私はここまで必死に積み上げてきたお客さまとの信頼が、一瞬で壊されていくのを見ていました。
お客さまが可哀想で。悔しくて。怒りが込み上げて。
Kekoにバケツの水をぶっかけてやりたい衝動に駆られました。
夫が修正する姿を、Kekoはまたタバコに火をつけ、ふぅ〜と踏ん反り返りながら眺めていました。タバコの灰が、床に散った髪に引火したらどうするんだ!
怒りはもう、怒バッテンの如くでした。
【読者の方へ】
理不尽な怒りを感じたとき、その怒りは正しいものです。
おかしいことをおかしいと感じる心が、あなたを守っています。
📞 #8778
各都道府県の女性支援センターへつながります。


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