保護施設を出て、就職先が見つかりました。職場では緊張の連続でした。
今まで働いたことのない低料金の美容室。そこには、今まで出会ったことのない攻撃的な客層がいました。「もう、できません」と、何度泣いたことでしょうか。
「できる、できる。そのうち慣れるから」
バックヤードで泣く私の肩甲骨あたりを、次のお客様の伝票を挟んだバインダーで軽く突きながら、笑って励ましてくださった女性店長。低料金の客層は、驚くほど威圧感があり、言ってなんぼ、文句言って当然、巻き舌で、女性なのにガラが悪い方が多かったのです。
「早く来てね」と軽くおっしゃる店長の後を、涙を拭って店に出ました。離婚調停も、始まったばかりのことでした。
「あのなぁ、この客怖いと思ったら、指先から伝わるから。堂々と構えて、冷静になって」
いつも気にかけてくださったスタッフさんの言葉に、今も感謝しています。指先から伝わる――この言葉は、今も忘れられません。
怖い。そう思ったことは、家を出るまで毎日でした。でも、この怖いお客様は「今」で終わる。家に帰ったら、この怖いお客様はいない。そうか。そう思えたら、よし、やろう、負けない、と思えました。
数ヶ月は一生懸命に仕事をしました。必死でした。
迷惑をかけても、怒られるどころか助言をもらえて、助けてもらえる。今までそんなことは皆無でした。目ん玉をひん剥いたかきくけこ夫からの怒号も、そこにはありませんでした。
「少しは慣れましたか?」
その気遣いの言葉に、今までずっと張り巡らせていた――夫がどこに埋めたか分からない地雷を探すアンテナが、すべて折れた瞬間でした。
閉店間際、手の空いていたスタッフ数名で、乾燥機から出てきたタオルを畳んでいたときのことです。あるスタッフさんがくしゃみをして、咳を何度かしました。私は咄嗟に「大丈夫ですか?」と声をかけました。
「もう!うつさんといてや!さっさと薬飲んで寝ろ!」
女性スタッフさんの言葉に唖然としましたが、別のスタッフさんも続けました。
「ホンマやで!一人で生活してるんやから。ましゅ邸さんもそんな優しいこと言わなくていいよ。自己管理ちゃんとしろ!」
なるほど、と納得しました。
私は今まで、アホのかきくけこ夫に何を気を遣っていたんだろうか。稼ぎもない、かまってちゃん、ギャンブル狂い、汚い、臭い、ケチ、根性が悪い、あの横柄な態度に。私も強く出た方が良かったのか。いや、帰る場所も、行く場所もなかったんです。
「大体な、大丈夫って言われたいねん。男はな、かまってちゃんか!」
ああ、そうか。その言葉が、すとんと腑に落ちました。
些細なことから、次第に心を病んでいきます。悩んだら、おかしいなと思ったら、#8778にお電話してください。
一人で抱え込まず、あなたのミカタ#8778、または各都道府県の女性支援センターに、まずは話してみてください。
明けない夜はない。
📞 #8778
各都道府県の女性支援センターにつながります。
詳しくはこちら→ https://www.mhlw.go.jp/anata-no-mikata/



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