「まさかの名前」ーーICUで出会った、義父に寄り添う女性
手術が終わり、兄弟での話し合いは後日ということになりました。
後日とは、いつのことだろう。
義父がしばらくICUにいるとのことで、その日は解散になりました。
翌朝、夫が言い出しました。
「親父の見舞いに行く」
ICUからまだ一般病棟に移っていない。
そんな状況でも、肝心な時に居なかった夫が、今度は率先して動く。
逆らえば私が怪我をさせられる。
仕方なく、店に「途中から開けます」と張り紙をして、義母と長女と共に夫の運転する車で病院へ向かいました。
ICUの中は、無数の機械音が響いていました。
ぴっ、ぴっ、ぴっ。
命を繋ぐ音の中、義父のベッドを探しました。
するとそこに、一人の年配の女性がいました。
「お父さん、早く元気になってね」
優しい声で、旦那さんと思われる方の腕をそっと撫でていました。
仲が良いなぁ。私には絶対ないわ。
そう思いながら、ふとベッドのネームプレートに目をやりました。
まさかの、義父の名前。
ええぇぇぇ!
私の目は、義父に寄り添うその女性に釘付けになりました。
この人が、愛人?
脳梗塞を放置した人?
何度も何度も電話をかけてきた人?
ドラマで見るような愛人のイメージとは、かけ離れていました。
普通のおばちゃんでした。
あいた口が塞がりませんでした。
その私の様子に気づいた義母と夫が、義父を見つけました。
愛人は私たちの存在に気づくと、すぐに部屋を出て行きました。
この家の「普通」は、外の世界の「普通」とは違いました。
次々と明かされる現実に、もう驚く気力すら失いかけていました。
それでも私は、毎日店に立ち続けていました。
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