心臓がバクバクと音を立てる中、私は初めての朝礼を経験しました。
ずらりと並んだスタッフは総勢20名。そのうち10名も男性スタッフがいることに驚きました。
「今日から入ったましゅ邸さんです。」
女性店長に紹介され、私は緊張しながら挨拶をしました。何をどうしたら良いのか、どう動けば良いのか。わからないことすら、わからない状態でした。
想像していた以上に忙しく、お客様がひっきりなしにやってきます。店長が「カットしてください」「次は、パーマ入ってください」と、次々と指示を出してくださったおかげで、嫌なことを思い出したり考えたりする暇もなく、時間は過ぎていきました。
けれど、私が「今日はどういたしましょうか?」とお聞きすると、お客様に突然キレられました。
「はあぁ!何言ってんねん!」
スタイルを聞いてはいけない。それは、入ったばかりの私には未知の世界でした。他のスタッフがどう最初の言葉を発しているのかを見て、ようやく気づきました。スタイルではなく、長さを聞くのだと。
「長さはどうしましょうか?」
そう聞くと、今度は「横はこれくらい」と、お客様の手が出る出る。指で髪を挟み、その指が動く動く。一体どこをどうしたいのか。
「1センチ切ったらどれくらい短くなる?」
肩甲骨あたりまであるロングの方に聞かれ、「そんなに変わりませんよ」と答えると、「1センチ切ったらどうなる?」とまた聞かれます。え、どう答えたら良いのだろう。助けを求める私に気づいたスタッフが、隣から助けてくれました。
「1センチ短くなります。」
ほ〜、そう言えば良かったのか。感心しながら施術を続けました。
今思えば、当たり前なのです。1センチ切ったら1センチ短くなります。
態度の悪いお客様も多くいました。女性なのに踏ん反り返って座り、股を広げて脚を膝に乗せる方。くちゃくちゃと音を立ててガムを噛む方。「申し訳ございませんが、奥まで腰を掛けてください」とお願いすると、
「はぁ?何で。プロやろ?切れるやろ?」
巻き舌交じりの言葉に、ビクッとしてしまいました。
そして何より驚いたのは、どの方も髪が汚れていたことでした。まさか、これが洗礼というものなのか。手の空いていた若い男性スタッフに、思い切って聞いてみました。
「あの、お客さんの髪の毛が汚いのですが……」
男性スタッフは笑って言いました。
「こういう店は髪ベタベタの人が多いですよ。初めてですか?そのうち慣れます。でも困ったら、いつでも声かけてください。」
その時はまだ意味がよくわかりませんでしたが、男の人って優しいんだ、と思った初日でもありました。
けれど、その日の夜。私が低料金の美容室に勤めたことを次女から聞いた夫が、次女を通してこんな言葉を伝えてきました。
「そんな所に勤めやがって! 俺の恥やないか。」
どこまで嫌がらせをすれば気が済むのか。胃の下のあたりが、ずしっと重くなった日でもありました。
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